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2019年1月号 家族の要望で「空間除菌商品」を各居室に配置 -利用者が喉の不調を訴え使用を中止-

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■ある家族からの感染症対策の提案

 N特養では毎年のように利用者のインフルエンザ感染が発生しており、今年も対策強化を申し合わせました。ある日、利用者Mさんの娘さんから居室に空気の除菌剤を置きたいと申し出があったため、相談員は「インフルエンザの予防に役立ちそうですね」と言って承諾をしました。Mさんの娘さんはその後も「インフルエンザだけでなくノロにも効果があるんですよ」とアピールをします。その上、「うちでも各部屋に置いているの。施設でも各部屋に置いてはどうですか?」と勧めてきます。相談員は「施設長に相談してみます」と返答を濁しましたが、娘さんはいつの間にか施設長に直接話しており、全ての部屋に置くことになってしまいました。ところが、この空気の除菌剤を置いた3日後に、1名の利用者が咳などの気管の不調を訴えたため使用を中止する事となりました

「空間除菌商品」の効果とは?

■国民生活センターの商品テストの結果
 国民生活センターは、平成22年に同商品の効果と安全性について商品テストを行っています。その結果、同センターは「どの商品も空気中の二酸化塩素濃度は一定せず殺菌効果には疑問があり、人体への害も想定されるため使用に際しては注意が必要である」と結論付けています。二酸化塩素は塩素ガスよりも毒性が強く、人体に害のない濃度は塩素が0.5ppmに対して0.1ppmとされています(※)。これに対して、空間除菌商品は開封直後に二酸化塩素の濃度が急激に上がり、その後低位に推移して空気中の濃度が安定せず、ある商品は開封1日後に4.6ppmまで上昇していました。
※米国産業衛生専門家会議(ACGIH)の作業環境に関する基準

■空間除菌商品のインフルエンザウイルスに対する効果
 二酸化塩素ガスの殺菌効果について、国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長西村秀一氏らは、2016年に「低濃度二酸化塩素による空中浮遊インフルエンザウイルスの制御」と題した実験結果を、日本環境感染学会誌に発表しています。彼らは低濃度(0.3ppm)の二酸化塩素を放散させ、空気中のインフルエンザウイルスが不活性化するかを実験したのです。
 その結果は「空間除菌商品から放散される二酸化塩素の濃度は一定に保たれず効果には疑問がある。他の方法で一定濃度の二酸化塩素を空中に放散させたが、インフルエンザウイルスの不活性化(殺菌)の効果は確認できなかった」というものでした。また、「開封直後に急激に放散濃度が上がり、人体に害のない濃度を超える商品もある」と注意を喚起しています。

■インフルエンザ居室の空気を除菌する意味
 本論文には次のような興味深い指摘もあります。「重症のインフルエンザ患者が居室で100回咳をしても、20分後には数十個しか活性ウイルスは残らない。空気中のウイルスの数は1㎥に数個でこれを吸い込む確率は極めて低く、居室の空気を除菌する意味があるか疑問である」と。
 また、昨年6月に米国感染症学会の機関誌に、「インフルエンザウイルスを上気道粘膜の分泌物で覆って実験すると、湿度が高くても感染力が弱くならなかった」とアメリカの研究者が発表しました。1961年にハーパーが「インフルエンザウイルスは湿度に弱い」との実験結果を発表し、部屋を湿度を上げることがインフルエンザ予防に有効であるとされてきましたが、どうもこれが怪しいのです。ウイルス自体は湿度には弱いけれど、咳で飛散した飛沫中のウイルスは湿度の影響を受けないというのです。60年も信じられていた定説も怪しいのですから、きちんと手洗いをする方が得策のようです。


  監修 株式会社安全な介護 山田 滋             ※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。

 

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