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2017年 12月号 暴力の激しい認知症利用者の家族に服薬の影響を説明

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■暴力行為が激しく介護職員も苦慮

Mさんは身体に障害のない認知症が重い利用者(78歳男性・要介護3)です。息子さん夫婦と同居していますが、1ヶ月に2週間程度は特養N苑のショートステイを利用しています。MさんはBPSD(*1)による激しい暴力行為があり、対応する介護職員も大変な苦労をしています。またこれらの暴力行為のために、他の施設は受け入れてくれずN苑が頼みの綱です。
 ある時、相談員が息子さんに「Mさんが服用している抗精神病薬(*2)や抗認知症薬はBPSDに悪影響があるかもしれません」と言って、“BPSDに対応する向精神薬(*3)使用ガイドライン”を渡しました。Mさんは、抗精神病薬を2種類(リスペリドンとクエチアピン)と、抗認知症薬のドネペジル塩酸塩を処方されていましたが、このガイドラインによると悪影響が大きいらしいのです。息子さんが、違う医師を探して受診すると、まず、BPSD(暴力行為)の原因究明をしました。その結果、暴力行為の根本原因は過去に病院でつなぎ服を着せられて拘束されたことだと分かりました。それにより「非薬物的介入」を実施し、抗精神病薬は抑肝散化陳皮半夏に変更し、ドネペジル塩酸塩もメマンチンに替えました。半年ほど経過すると暴力行為は一切なくなり、笑顔も見えるようになりました。

ガイドラインを参考にしているかかりつけ医はたった10%

■なぜか普及しないガイドライン
 本ガイドラインは「認知症利用者のBPSDを鎮静させる目的で処方されている向精神薬が逆に悪影響がある」として、厚生労働省が作成したものです。第1版は2014年4月に発行されていますが、昨年4月の第2版の作成のために行われた研究事業の「医師500人調査」では、次のような事実が判明しています。

    
このように、以前からBPSDがある認知症の利用者に対する向精神薬使用は、その弊害が指摘されていて、しかもこのようなガイドラインが出ているにもかかわらず一向に事態は改善していません。Mさんのように、抗精神病薬を2種類処方された上にドネペジル塩酸塩を処方されれば、薬の弊害の方が大きくなる可能性は高いのです。幸いMさんは、N苑の相談員の指摘によって息子さんが処方薬の弊害に気付いて対処したので、普通の生活を取り戻せました。

■激しいBPSDで悩む家族と施設職員 
 本事例のように、認知症の利用者の激しいBPSDに悩まされているのは、受け入れ先を制限される家族だけではありません。介護現場で認知症の重い利用者の対応をしている介護職員も、大きなリスクを負って苦労しています。
 厚労省は、2015年2月の通知で施設職員による虐待の原因として、認知症利用者への対応の知識不足を挙げています。しかし、BPSD悪化の原因となる処方薬を放置しているのでは本末転倒ですから、厚労省が認知症利用者への抗精神病薬の処方を禁止すれば良いのです。施設でも抗精神病薬の弊害を家族に知らせて、家族から医師に服薬の変更を申し出てもらえば良いのです。

BPSDに対応する向精神薬使用ガイドラインを家族に説明しよう

 

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