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2016年 5月号 ヒヤリハットシート提出直後に利用者が転倒・骨折
ヒヤリハットシート提出直後に利用者が転倒・骨折

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■ヒヤリハットシートは役に立たず

 Hさん(83歳男性)は要介護4で認知症が重い特別養護老人ホームの入所者です。歩行は可能ですが、ふらついて転倒するため、必ず介護職員の付き添いが必要です。ある時、A職員が歩行介助中にHさんが急に膝折れしましたが、たまたま腰に手を回したところだったので、支えることができました。A職員はヒヤリハットシートに「今まで膝折れは無かったが、今後は歩行介助に注意が必要」と書いて、翌日提出しました。ところが、シートの提出直後に、B職員がHさんを歩行介助している時に膝折れで転倒して、大腿骨を骨折してしまいました。その上、B職員は健側の腕をつかんでいて、転倒時に強く引っぱり上げたため、上腕骨も骨折させてしまったのです。Hさんの家族は不適切な介助方法が原因で2カ所も骨折させたことを重く見て、B職員を居室担当から外すように求めてきました。

対応の優先順位の高いヒヤリハットは「ヒヤリハット通報」を

◆ヒヤリハットシートより緊急カンファレンスを優先

 不適切な介助方法も問題ですが、A職員がHさんの膝折れのヒヤリハットに気付いていながら、漫然とヒヤリハットシートに書いて提出したために、防げる事故が防げなかったことが大きな問題です。歩行介助中に膝折れして転倒しそうになったのであれば、すぐに緊急カンファレンスを招集し、Hさんが歩行介助中に膝折れがあることを他の職員に知らせるべきだったのです。そうすれば、B職員も腕をつかむような歩行介助はしなかったでしょう。果たしてヒヤリハット活動は事故防止に役立つのでしょうか?
 「危険に気付くことは大事だから書くだけでも意味がある」という人もいますが、この事例は明らかにヒヤリハット活動の弊害です。なぜなら、A職員は気付いたヒヤリハットをシートに書くことが仕事だと思って、他の職員に注意喚起すらしていません。ヒヤリハット活動などやっていなかった時代だったら、このような危険にどう対応していたでしょうか?おそらく、すぐに緊急カンファレンスが開かれ、Hさんの歩行介助時の注意を徹底するか、場合によっては「当面は車椅子対応」となったかもしれません。職員間で迅速にリスク情報を共有しなくてはならないような緊急性の高いケースで、漫然とシートを書いて提出しているだけでは弊害の方が大きいのではないでしょうか?A職員がすぐに他の職員に「Hさんの膝折れ転倒の危険性」を伝えていれば、B職員は適切な介助方法でHさんの転倒を食い止められたかも知れないのですから。

◆ヒヤリハットシートに優先順位を付けたら

 ヒヤリハットを活用して事故を防ごうとしたら、まず対応の優先順位を付けることから始めることが大切です。例えば、本事例のように迅速に職員間で情報共有が必要なヒヤリハットであれば、「シートを記入する前に主任に報告する」という決まりにすれば良いのです。介助中にヒヤリハットが起きれば、このヒヤリハットは「介護のプロとして防ぐべき義務」の大きいリスクであり、これらも優先度が高いのですから、「口頭で主任に報告」とします。これら優先順位の高いものは「ヒヤリハット通報」と呼んで、シートの提出より重視するのです。ボヤボヤしていたら、他の職員が介助中に事故を起こしてしまいます。
 ヒヤリハットに緊急サインを付けて区分している施設もあります。具体的にはヒヤリハットシートの枠外に「緊急対応」と赤字で書いて、ヘルパーステーションのボードに貼ったり、赤い付箋を付けて提出するなどの方法で他のヒヤリハットと区分しているのです。「本日離床時ふらつきあり、車椅子対応にして下さい」と、枠外にやはり赤ペンで書いて床頭台近くの壁に貼っていた職員もいました。ヒヤリハットを書くことは良い事ですが、その取扱い方についてはそろそろ見直しが必要なのではないでしょうか?

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