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2016年 4月号 自立支援を優先すると事故が起きた時過失になる?
自立支援を優先すると事故が起きた時過失になる?

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■自立支援はリスクを伴う

 Dさん(女性73歳)は要介護2で認知症がないデイサービスの利用者です。運動不足や生活習慣から肥満ぎみで高血圧や糖尿病などの持病もあります。膝関節の変形や下肢筋力の低下から、杖歩行は可能ですが転倒の危険があす。しかしながら利用開始時に長女が「自分で歩かせてほしい、医師も運動が必要だと言っている」と要望する為、ケアプランでは“自立歩行”を目標にあげました。本人も当初は消極でしたが、次第に積極的に体操や機能訓練にも参加することにより、しばらくすると歩行が安定し体重も減り本人も長女も大喜びでした。

 ところが、ある日Dさんはデイサービスで転倒して、大腿骨を骨折してしまいました。その日は少し歩行が不安定だった為、Dさんがトイレに立つ時職員が「ご一緒しますよ」と声をかけましたが、「大丈夫よ。独りで行けるから」と嬉しそうに言うので、自尊心を大切にしてついて行かなかったのです。事故後もDさんは「私の不注意だから誰のせいでもないよ」と仰ることもあり、長女も「独りでしっかり歩いていたのだから仕方がありません」と納得してくれました。ところが、同居の次女がデイサービスに対して、「少しでも転倒の危険があれば介助すべきだ、デイサービスの過失がある」と賠償責任を主張した訴訟となり、結果裁判所はデイサービスの過失を認定してしまいました。

少しでもリスクがあれば本人の意思に反しても介助すべきなのか

◆自立支援は介護保険制度の理念である

 介護保険制度の目的には、本人の生活支援や家族介護の負担軽減と共に「自立した生活ができるように支援する」という大きな理念があります。なぜなら、本人ができることを援助してしまうと身体機能や意欲を低下させ、生活自立度を損ない要介護度が上がるからです。保険という制度である限り、給付抑制のための介護予防や自立支援も大きな事業目的なのです。
 したがって、ケアプランも介護計画書も本人ができることをヘルパーや介護職が過剰に援助しないよう心掛けますし、施設の現場でも「過介護は本人の自立を損なう」として本人の自発的な動作を促し、職員は安全に動作ができるようにできる限り配慮をするのです。

◆事故発生時のリスクだけで安全配慮義務が判断される

 事故が起きると事故発生時点のリスクに対して安全配慮義務を尽くしていたか?という非常に狭い観点だけで過失の有無が判断がされる場合があります。しかし、介護というサービスは利用者の生活を将来に亘って継続的に切れ目なく支える仕事ですから、リスクに過敏に反応して過剰に介助すれば本人の生活機能を損なうので、正しい介護とは言えなくなってしまう可能性があります。当然多少のリスクがあっても自立支援のサービスを選択せざるを得ないケースもあります。本事例のように介護保険制度の趣旨だけに従うと、安全配慮義務違反を主張されてしまうという矛盾が起こっています。介護事業者や施設は、介護保険制度の趣旨と法の解釈が異なるケースがあるといった状況のもと、サービス提供を続けているのが実情です。

※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。
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