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2016年 1月号 早朝に発生するSさんの転倒原因は“利尿剤か電気毛布”か?
早朝に発生するSさんの転倒原因は“利尿剤か電気毛布”か?

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■早朝に起こる脱水の原因は?

 Sさん(78歳女性)は、脳梗塞による軽度の左半身麻痺がある特別養護老人ホームの入所者です。居宅に居た時からトイレが頻回で間に合わないことがあるため、パッドを付けるなどの対応をしています。Sさんは朝食後は安定した杖歩行が出来るのですが、なぜか早朝に転倒が多く発生します。入所当初から看護師と嘱託医が、早朝のバイタルなどを計って転倒の原因を探っています。ある時、看護師がSさんの熱を計ろうとしたところ、脇の下がひどく乾燥していることに気付き、脱水による転倒を疑いました。そこで、就寝前にお茶を2杯飲んでもらい、夜間の脱水を予防しようということになりました。しかしながら夜間のトイレが頻回になるだけで、早朝の転倒予防には効果がありません。
 ある時、服薬の見直しなどで施設に関わっている若い医師が「Sさんの脱水は、利尿作用の強い血圧降下剤と電気毛布だ。どんなに水分を補給してもすぐ排出されて低ナトリウム血症になっている。慢性的な脱水症状は認知症の発症を早めるので対応が必要」と指摘したうえで、Sさんが飲んでいた血圧降下剤フロセミド(ループ利尿薬)による水分の排出と「寒くて眠れない」が口癖で毎晩過度に使用する電気毛布による発汗が原因だと分析したのです。
 その後Sさんは、医師による血圧降下剤の見直しと、家族が購入してくれた“足浴器(高級スチームフットスパ)”のおかげで脱水症状が無くなり、転倒はほとんどなくなりました。

血圧降下剤としてループ利尿薬を高齢者に処方する弊害

◆ループ利尿薬とは?

 高血圧症の治療に使用される血圧降下作用がある薬剤は、その血圧降下作用(作用機序)の違いから、現在10種類以上もあり、他の慢性疾患への影響や作用効果からその患者に合った薬剤を選ばなくてはならないとされています。その中でループ利尿薬という血圧降下剤は、本態性高血圧症の治療薬や心臓病・浮腫の治療などで用いられる、利尿作用が最も強いとされる利尿薬です。もちろん、心臓病や腎臓性の浮腫などの治療では威力を発揮しますが、Sさんのような本態性高血圧だけの血圧降下剤としては、利尿作用による脱水症状、また、脱水症状により高齢者が引き起こしやすい低ナトリウム血症など様々な弊害があり、第一選択とすべきではありません。

◆就寝前の水分補給でも改善しない脱水症状

 電気毛布や部屋の乾燥などで発汗により血液中の水分が失われると、同時にナトリウムが失われます。ナトリウムが欠乏した状態で水分だけを補給しても、血液中のナトリウム濃度を保持するために水分はすぐに排出されてしまい、脱水の改善にはつながりません。Sさんが就寝前にお茶を2杯飲んでも脱水症状が改善されなかったのは、ナトリウムの不足が補われなかったことによります。

◆血圧降下より転倒防止

 血圧降下剤の投与により高血圧が改善されないと、投薬量を増やすか他の薬剤を合剤するかどちらかになります。しかし、高齢者においては1種類の血圧降下剤で効果が得られない場合に処方量を増やすことは控えなければなりません。その血圧降下剤が持つ副作用も強くなり重篤な弊害を引き超す可能性があるからです。例えば、利尿剤の処方利用を増やすことで、脱水症状から転倒やせん妄、重篤な意識障害を起こすことがあります。

◆なぜ高齢者の血圧降下剤は利尿剤が多いのか?

 高齢者施設の入所者も血圧降下剤の服用が多いのですが、他の年齢層に比べ利尿剤の処方が多いのはなぜでしょうか?血圧降下剤の処方全体に占める利尿剤の割合は2~3%であるのに、高齢者では弊害が多いにもかかわらず、その割合が高いように思うのですがなぜでしょうか?

※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。
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