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2015年 11月号 ヘルパーによる利用者虐待を引き起こした隠れた要因
ヘルパーによる利用者虐待を引き起こした隠れた要因

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■「まさか信頼していたベテランヘルパーが」

 訪問介護のSヘルパーが、家族の居ない間に認知症の利用者に暴力を振るうという虐待事件が起きました。利用者の近所に住む娘さんが異常に厳しい性格で、ヘルパーの小さなミスや手違いも許さず毎回クレームとなるため、ヘルパーが何度も交替していました。Sヘルパーも、この家族の限度を超えた厳しいチェックと、次第にエスカレートする要求に耐えかねて、交替を申し出ていました。しかし、管理者からは「あの娘さんに対応できるのはベテランのあなたしかいないの、何とか頑張って」と言われて、耐えるしかありませんでした。
 ある時、Sヘルパーは認知症の利用者の繰り返す暴言にカッとなって暴力を振るい、その後も抓る等の暴力を度々繰り返していました。利用者の身体にアザを発見した娘さんが市に通報して、ヘルパーの虐待行為が発覚したのです。事業所の管理者は「あのベテランヘルパーが利用者に暴力を振るうなんて考えられない」と述べました。法人にとっても社会的信用を失墜させる事件となり、コンプライアンス研修を徹底することになりました。しかし、この虐待事件をヘルパー個人の責任で片づけて良いのでしょうか?

虐待事件の要因は限度を超えた要求を放置した管理者にもある

◆介護事業従業者による虐待の背景には組織的要因がある

 介護のプロである職員はどんな状況であっても、利用者を虐待して良い訳はありませんから、Sヘルパーの行為は許されるものではありません。しかし、一方で事件の背景には利用者家族からのヘルパーに対する限度を超えた要求があったことも見逃せません。ほとんどのヘルパーが耐えられずに交替を申し出た家族の要求は次のようなものでした。

 多くの訪問介護事業所の管理者は、家族の要求が限度を超えたようなものであっても、これらに対抗しようとせず受け入れてしまいます。上司である管理者が受け入れてしまった以上、部下のヘルパーは従わざるを得ず、何とか耐えるしかありません。もし、管理者が家族の要求に毅然とした態度でNoと言っていれば、虐待は起こらなかったのですから、管理者の対応もこの事件の背後の要因と言えます。
 介護事業の従事者による虐待事件が起きると、その職員個人の責任として処理されてしまいますが、再発を防ぐためにはこの管理者の家族対応のような組織的要因を改善することも大切です。また、ベテランのヘルパーがどのような精神状態でこのような虐待行為を行ったのか分析することも、再発防止に役立ちます。このSヘルパーの虐待行為は心理学で言われる「防衛機制の置き換え」という心理的作用で説明することができます。

◆「防衛機制の置き換え」とは?

 人は誰でも耐え難い精神的苦痛を味わうと、その苦痛から逃れるために本能的に防衛機制という心理的作用が働くことがあります。様々な種類の防衛機制の中に「置き換え」があり、自分に精神的苦痛を与える対象に抗することができない時に、その対象に近いものに置き換えて、攻撃対象とするケースなどを言います。例えば、母親にひどい扱いを受けたベビーシッターが、母親の居ない間に子供に暴力を振るうというケースがこれに該当します。職員がこのような状況にならないよう組織としての対応が必要なのです。

※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。
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