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2015年 10月号 10日間のうちに2回も骨折、「虐待だ」と主張する家族
10日間のうちに2回も骨折、「虐待だ」と主張する家族

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■「わざとケガをさせた」と家族が『市』に虐待通報

 老人保健施設M苑は在宅復帰のためのリハビリに力を入れており、身体機能が回復して退所する利用者も多く、入退所者が頻繁でベッドも満床になることもなく相談員も苦心しています。
 ある時、ベッドが10床も空いてしまったため相談員はケアマネジャーに電話入れをしていると、「認知症の重い利用者で入所希望の人がいる」と聞いたため、相談員は早速Sさんの面談に行きました。Sさんは89歳の女性で、身体には全く障害は無いものの認知症が重いため、居宅でも拒否や暴力などで時折対応が難しくなるそうです。また、「デイやショートでは、落ち着きが無く、時には職員に迷惑をかけることもあり気を遣っている」と家族が話しました。M苑で検討した結果、リハビリの対象ではないが、空きベッドも多いので入所してもらうことになりました。
 ところが、Sさんが入所してみると、職員が驚くような危険な行動をすることが分かりました。“椅子の上で立ち上がる”、“テーブルの上に上る”、“ベッドに椅子を載せて上る”、“床頭台によじ登る”など、高齢者とは思えない行動をして、1日に何度も転倒や転落を繰り返します。M苑では介護スタッフが交代で常時見守りを行うことにしましたが、転倒や転落は防げません。
 ある日、Sさんが足を引きずっているので受診をしたところ、右足趾の中節骨が3本骨折していたため、家族には「足を箪笥にぶつけたのだと思う」と説明し納得をしてもらいました。足趾の骨折は保存療法となり施設に戻ったSさんですが、行動は全く変わらず転倒を繰り返します。10日後に左腕に腫れが見つかり受診したところ、左上腕骨骨折と診断されました。家族は「10日間で2回も骨折するのはおかしい、虐待に違いない」と市に通報してしまいました。

BPSDが重い認知症利用者をリハビリ型老健で対応できるか?

本件(虐待通報)は、調査より「骨折事故がたまたま2件続いただけであり、虐待の可能性は低い」という結論が出ました。この老健ではそれ以降BPSDが重い認知症の利用者の入所はお断りすることとしましたが、本当にそれで良かったのでしょうか?

《1》利用者の心身の状況に合ったサービスを選択する
今回の老健のトラブルの大きな原因は、BPSDが重い認知症の利用者を安易に受け入れたことです。常識的に考えればSさんの状態は老健よりグループホームを選択すべきでしょう。ベッド稼働を優先させた相談員の判断にも問題がありますが、ケアマネジャーの判断はどうだったのでしょう?最近ではケアの独自性を明確にしている施設もありますから、利用者に合った施設を選択しなくてはなりません。

《2》認知症ケアの知識と技術はどの施設でも必要
一方で老健側では「リハビリ重視なので認知症はお断り」と、簡単に片づけて良いのでしょうか?Sさんは、居宅でひどいBPSDがあった訳ではありませんから、施設の対応によってBPSDが悪化したのかもしれません。入所した後にBPSDが出たり認知症が悪化する利用者は少なくありませんから、今後はどの施設でも認知症ケアの基本的な知識と技術の習得は避けて通れません。

《3》家族との情報共有が足りない
本事例のトラブルで特徴的なことは、家族が虐待と誤解したことです。家族は「10日間に2度も骨折するはずがない」と考えましたが、実態はいつ骨折してもおかしくない生活状態でした。職員の対応にも限界がありますので、施設は絶えず利用者のリスクの情報を伝えると共に「事故の防止に家族にお知恵も貸して下さい」と協力を求めなければなりません。

※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。
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