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2015年 1月号 大学病院で認知症と診断されたデイサービスの利用者
大学病院で認知症と診断されたデイサービスの利用者

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記憶力や判断力が正常な認知症利用者はいるか?

■中核症状がない認知症の患者はいるか?

 Nさん(76歳男性・要介護2)は1年前に脳出血で大学病院の脳外科に入院しましたが、幸い障害は軽I半身麻痺だけでした。ところが入院半月後に、突然時間や場所が分からなくなり、自分が誰かも分からなくなって、うろうろと歩き回るという症状が現れました。MRI検査で脳細胞の器質的病変が確認され、Nさんは脳血管性認知症と診断されました。退院後は杖で歩行ができるまで回復し、デイサービスを利用するようになりました。
 介護職員はサービス提供開始時、認知症生活自立度がⅡbという要介護認定情報から、Nさんを認知症の重い利用者だと考えていました。しかし、実際にNさんに対応してみると、理解力も記憶力もしっかりしており、意思疎通も問題が無く介護職員は驚きました。ところが、利用開始から1カ月経過した頃から、他の利用者が座る直前に椅子を引いて転倒させたり、女性利用者に抱き付いて卑猥な言葉を言ったりするようになりました。他の利用者の家族からNさんのデイサービスの利用中止の要求があった為、検討の結果止む無くNさんの娘さんにデイサービス利用のお断りの連絡をすると「お父さんがそんなことをする訳はない」と頑強に主張します。仕方なくデイサービスでは娘さんに利用拒否を手紙で通知したところ、市に苦情申立となりました。

脳外科でのMRI検査による診断で認知症は確定するか?

◆中核症状がない認知症の利用者はいない

 認知症の障害は人によって様々ですが、中核症状と周辺症状(行動心理症状)に大別され(右図)、中核症状が無い認知症の利用者はいません。逆に言えば「中核症状が無ければ認知症と診断できない」ということになります。アメリカ精神医学会のDMS-4による認知症の診断基準も同様です。しかし、入院中には「突然時間や場所が分からなくなり、自分が誰かも分からなくなる」と言う症状が現れ、MRIの画像診断でも脳細胞の損傷が確認されていたのに、なぜNさんはデイサービスでは、認知症の中核症状が現れないのでしょうか?

◆入院中の症状はせん妄・障害は高次脳機能障害

 Nさんの状況に関する仮説は、「入院中に現れた精神症状は典型的なせん妄で、脳血管障害のために脳が損傷して現れた障害は高次脳機能障害である」というものです。高次脳機能障害は、生活機能障害(自分の生活行為ができなくなる)と社会的行動障害(他者に対して適切な対応ができなくなる)の2つの障害に大別されますが、全ての患者に両者が現れる訳ではありません。Nさんの場合は生活機能障害はほとんど現れず、社会的行動障害が強く現れたものと考えられます。
 デイサービスは「迷惑行為があるから即利用中止」と判断するだけではなくNさんの障害をきちんと評価し、障害に対する家族の理解を促すことがデイサービスの大きな役割です。最近では、高齢者の脳血管障害による高次脳機能障害の増加から、各都道府県で相談窓口やリハビリ施設の充実、理解促進のためのパンフレット作成などの取組が進んでいますので、これらを利用することも大切です。

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