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2014年 7月号 確率の10分の1の事故防止対策を組み合わせる手法
確率の10分の1の事故防止対策を組み合わせる手法

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<事例>『あるグループホームの津波避難対策』

 浜松市南区のグループホームに依頼されて、現地で津波対策を検討しました。南海トラフの巨大地震の津波の想定最大波高は16mであるのに対し、地域で指定された避難建物の高さは12mで4m足りない事が判明しました。隣の駐車場には併設デイサービスの大型の送迎車が2台並んでいた為「併設デイの送迎車があります。キーをコピーして預かり避難時に使用しましょう」と言うと、施設長は「送迎車はデイの利用者が避難に使うのでうちでは使えない」と答えました。しかしどんな場合でも送迎車は絶対に使えないのでしょうか?

 デイが稼働しているのは9時から5時までですから、1日の3分の1の時間です。地震による津波は昼間に限定して発生する訳ではありませんから、夜間津波が発生したら、デイの送迎車は使えるのです。たとえ少ない確率でも、備えないよりはマシです。東日本大震災でも大型の送迎車で避難して津波から逃れた事例がありますから、2台の送迎車が使えれば避難は難しくありません。それに使用可能時間帯が3分の2というのは効果的です。

 また、周囲を歩くと避難建物より近くに商業施設の屋上駐車場があり、高さは8mくらいあります。施設長に「避難途中で間に合わなくなった時は、ここも避難建物の候補に入れておきましょう」と言うと、「高さが全く足りない」と言うのです。しかし、津波は必ず最大が16mでありそれ以下の7mかもしれません。どんな対策でも、検討のテーブルに載せて対策の選択肢を増やすことが大切なのです。

確率の低い防止対策でも組み合わせればリスクは低減できる

◆居室での利用者の転倒防止策は無い?

 居室での転倒危険が高い認知症の利用者への転倒防止策について、多くの施設の防止対策が「センサーを設置する」と言いますが、センサーだけで転倒を防ぐことは難しいでしょう。たとえ確率が低いと思われる防止対策でもいくつも組み合わせることで、総体的なリスクを低減することができます。もし、Aさんの転倒防止策の効果の確率が次のように計測できた場合、3つの対策を組み合わせるとどれくらいリスクを低減できるでしょう?

  1. 服薬の見直しで転倒の確率が2分の1に減らせる
  2. ベッドの高さや介助バーを利用者に合わせることで立ち上がり時の転倒の確率を2分の1に減らせる
  3. 床に衝撃吸収材を敷くことで転倒した時の骨折の確率を2分の1に減らせる

 机上の計算上では、Aさんの転倒骨折の確率は8分の1に減ることになります。

◆誤えん事故も防止対策の組み合わせでリスクを低減できる

 認知症の利用者の転倒防止対策以外でも、この確率の低い対策を組み合わせて全体的なリスク低減を図ることができます。
次のような対策効果の確率が判明していたら全体としてのリスクは何分の1になるでしょう?

  1. 口腔・えん下機能の的確なアセスメントを食事形態に反映させることで、誤えんの確率が2分の1に減る
  2. 食事姿勢や食事介助の方法を見直すことで、誤えんの確率が2分の1に減る
  3. 対応マニュアルを見直しや訓練の徹底で、誤えん発生時の死亡の確率が2分の1に減る

理屈では、誤えん事故で死亡する確率は8分の1に減ることになるのです。

◆防ぎにくい事故は確率を低減する対策も有効

 転倒や誤えんなどの事故は生活事故の典型ですから、全てを防ぐことは不可能です。しかし、リスクの把握、防止対策の実施、発生時の損害軽減策など、事故防止のそれぞれの段階で緻密な対策を講じて行けば、全体的なリスクを低減することはできるのです。

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