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2013年 12月号 施設に過失がある事故で後見人から賠償請求がこない
施設に過失がある事故で後見人から賠償請求がこない

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請求がこなければ賠償金は払わなくて良いか?

■特養の浴室で転倒し頚椎損傷

 Aさんは右半身麻痺で認知症のある特別養護老人ホームの入所者です。麻痺は軽く要介護3ですが、身寄りが無く後見人を選任して、自分の財産管理を任せています。ある日、浴室で洗い場から浴槽に移動する時に、介護職員が手引き歩行でAさんの移動を介助していましたが、浴槽の近くでAさんが足を滑らせ転倒し、浴槽の階段の手すりに右の頸部を強打しました。介護職は両手引歩行で介助していましたがしっかり握っていなかったため、転倒の瞬間には握っていた手を放していました。

 Aさんは首を強打したため意識不明となり、救急搬送されて頚椎損傷と診断されました。入院期間は2ヶ月に及び、事故の後遺症で下半身麻痺となり、移動は車椅子全介助となりました。入院期間が1ヶ月を超えたため、特養は退所扱いとなりましたが、入院期間中も職員が身の回りの世話などを手伝いに行きました。入院治療が終わった時、後見人と病院の話し合いで上肢のリハビリのため病院併設の老健に入所することになりました。

 特養ではAさんの事故における過失が明白であるため、保険会社にも事故報告を入れ治療費などの損害を賠償する準備をしていました。ところが、退院後2ヶ月経っても後見人の司法書士からは何の連絡もありません。相手から賠償請求が来ないのに、特養側から「賠償請求はいかがですか?」と尋ねるのもおかしな話ですので、後見人の司法書士にどう対応すべきか困ってしまいました。

賠償請求をしてこない後見人にどのように対応すべきか?

●家庭裁判所は後見人監督のための調査ができる

 法定後見制度で後見人に選任された者は、家庭裁判所が選任した後見監督人または、裁判所の調査官による調査を受ける場合があります。Aさんの後見人が調査を受ければ「当該後見人は被後見人の賠償請求権を行使せず、事故で被った損害にかかる費用を被後見人の財産から支出しており、後見人は被後見人の財産を適切に管理していない」とされる可能性があります。そうなれば後見人は後見監督人や調査官の指摘によって施設に賠償請求しなければなりません。

 すると、後見人からの賠償請求がないからといって、このまま事故の損害賠償をせずに放置しておけば、数年後に後見人への調査から突然賠償請求がくることも考えられます。特養では、地域包括支援センターの社会福祉士の資格を持つケースワーカーに、後見人の職務について相談し、この後見人が請求すべき賠償請求権の行使を怠っていることを確認しました。地域包括支援センターに事情を説明すると、社会福祉士は「自分から後見人に対して注意を促してあげる」と、後見人への説明を引き受けてくれました。

●施設は利用者や家族に対しても過失や賠償責任に関する説明義務があるか?

 それでは、賠償請求者が本人や家族の場合はどうでしょうか?民法によれば施設側の過失が原因で利用者に事故が起これば債務不履行として、利用者側に損害賠償請求権が発生します。利用者側は施設側の債務不履行を認識できれば、直ちに賠償請求が可能になるはずですが、実際には施設内で発生した事故の情報を正確に得ることは難しく、施設側の詳細な説明を待たなければ賠償請求はできません。

 ところが、介護保険サービスの提供においては、運営基準によって「介護事業者は利用者に対する介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない」と規定されているのです(※)。つまり、介護サービスの契約では、「サービス提供において利用者に事故が発生し、施設が事故の過失を認識していれば、利用者側からの請求がなくても、賠償義務を履行すべき」としているのです。事故に過失の無い場合、賠償義務がないことを説明する義務も施設側にあります。施設側に過失があることを認識していながら、故意に利用者側への説明を怠れば運営基準違反になりますから、施設は利用者側から求められなくても“速やかな損害賠償”のために必要な説明をしなくてはなりません。

(※)「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」三十五条4項

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