介護RMニュース - バックナンバー

2012年 12月号 「ここでいいです」と家族に言われ介助を交替し転倒
「ここでいいです」と家族に言われ介助を交替し転倒

オリジナルファイルのダウンロード(PDF)

家族の申し出があれば歩行の介助を任せても良いか?

ある送迎時の転倒事故から

 Dさんは、左片麻痺の88歳の男性利用者で、デイサービスを利用しています。Dさんは立位が取れず、通常移動は車椅子全介助なのですが、居宅の門から玄関まで10メートル程の通路の状態が悪く、車椅子が使えません。そこで、この区間だけは二人の職員が手引き歩行で移動を介助して、玄関までお送りしています。
 ある日、デイサービスの帰宅送迎時に、いつも通り介助員が送迎車から玄関までDさんに付き添って介助歩行を行いました。玄関のドアを奥様(82歳)が開けてくださり、いつものように上がりかまちまでDさんを誘導しようとすると、奥様が「ここでいいですよ」とDさんに手を差し伸べたため、介助員は「ではお願いします」と言って手を離しました。
 すると、突然Dさんがガクンと膝折れをして、前方に傾き奥様にもたれかかるようにして一緒に転倒してしまいました。奥様は上がりかまちに腰をぶつけましたが、幸い骨折には至りませんでした。デイサービスは「奥様が“ここでいいですよ”と言ったのでお任せした。奥様にお引き渡した時点で送迎業務は終了しているので施設の過失ではない」と主張しています。

たとえ家族の申し出があっても、最後まで安全に送り届けるべき
■デイサービスの主張を検証してみると?
イメージ

検証1:立位が極めて危険という状態で奥様に任せて良いか?
 立位不可・車椅子全介助という身体機能のDさんを、立たせていることは極めて転倒の危険が高い状態です。この状態で介助を交替することは、職員間でも危険を伴いますから、高齢の奥様では危険は明白です。

検証2:送迎業務はどこで終了するのか?
 通所介護の重要事項説明書などには、「送迎は自宅からデイサービスまで」記されているものが多く、具体的ではありません。しかし、契約上の安全配慮義務という点では、「帰宅送迎時には自宅の安全な場所に安全な状態で送り届けて送迎業務が終了する」と考えるべきでしょう。

 以上のことから、転倒の危険が明白な状態で奥様に歩行の介助を交替したことは、安全配慮義務違反として転倒事故の賠償責任を問われる可能性は高いでしょう。ですから、介助員は奥様の申し出を辞退し「最後まで送らせていただきます」言って上がりかまちに座っていただくまで介助すべきでした。

※デイサービスの送迎経路に危険があり、それが居宅敷地内であれば住宅改修制度により改善することも可能です。
 ですから、デイサービスではケアマネジャーに対して、安全にサービス提供ができる環境に改善するよう、要求
 すべきなのです。

トイレの付き添いを「1人で大丈夫」と言われて本人に任せた事例

本人の介助への辞退の申し出を受け入れ、介助せずに事故に至ったため裁判で争われた事例もあります。

デイサービス利用の被害者(要介護度2で杖歩行)が、デイサービス終了時に送迎を待つ間、トイレに行っておこうと考えトイレに赴いた。この時職員は本人が「一人で大丈夫だから」と言って、トイレのドアを閉めてしまったので、トイレ内までは付き添わなかった。被害者はトイレ内で転倒し大腿骨を骨折、要介護度4となった。
被害者の家族は、たとえ本人が「一人で大丈夫だから」と言っても、歩行が不安定で転倒の可能性が高く、また事故の結果も予測できるので、デイサービスに過失がある、と主張した。裁判所は原告の訴えを認め、トイレ内まで付き添い被害者の安全を確保すべき義務(安全配慮義務)があり、これを怠ったとして賠償請求を認めた。(H17年3月20日横浜地裁判例)

TOPページへ戻る

おすすめコンテンツ

  • 地域AD倶楽部
  • ベルマーク運動
  • 運送ラボ
  • 建設ラボ
  • フード&アグリラボ
  • ケア・フレンズ
  • ベストケアサポーターのご紹介
  • eco now
  • インターリスク総研