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<事例>

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お父様がお亡くなりになったというAさんからご相談をいただきました。お母様は既に他界され、相続人はAさんと妹Bさんのお二人です。主な相続財産は駅近くの4階建ての建物で、4階にお父様がお住まいでした。1階は料理店、2階はスナック、3階は賃貸用の住居で空き家になっています。Aさんは、ここ数年介護が必要であったお父様と一緒に暮らし、賃貸の家主としての対応も行っていました。建物は、4階部分と1~3階部分の二つの専有部分として登記されています。すなわち1~3階で一つの家屋として登記されているのです。預貯金は賃貸の際に預かっている保証金の他は、多くは残されていませんでした。主な財産が一棟の不動産しかなく、これをどう分けるか、相続人間で頭を悩ますところですが、Aさんによると、お父様がまだ介護がそれほど必要ではなかった頃、公証役場で遺言書を作成していたかもしれないというのです。

<結果>

さっそく公証役場で遺言書の検索を行ったところ、10年程前に書かれた遺言書が保管されていました。そこには、「建物の1階と4階をAさんに、2階と3階をBさんに、土地と預貯金はそれぞれ2分の1ずつ相続させる」とあり、遺言執行者としてAさんが指定されていました。また、付言事項として、「平等に相続させたい、兄妹仲良く末永く暮らしていくことを願う」 とありました。AさんはBさんにその内容を伝えました。

お父様としては、各階の賃料も考えて平等になるよう、1・4階、2・3階で組み合わせたようです。しかしながら、専業主婦のBさんは離れて暮らしており、今後スナックの家主としての対応や税務申告をしていくことは、かなり負担になりそうです。また、この遺言の内容で登記するとなると、一つの家屋として登記されている1~3階を区分登記しなければならなくなり、費用も手間もかかります。

結局、AさんとBさんで話し合い、この遺言書どおりではなく、協議で遺産分割することとなりました。永らく介護してきて平等とすることに少なからず不満があったAさんも、お父様の遺志はできるだけ尊重したいと、平等になるよう協議されました。最終的には不動産全部をAさんが取得し、その約半分相当額をBさんへ代償金として支払う形で合意されました。

ポイント

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遺言書を書くことにより、故人の遺志を反映した相続がなされますが、実現可能性や受遺者の意向等を踏まえないと、結局、相続人に委ねる形となり、遺志が反映されない可能性もあるので注意が必要です。

●遺言の原則

 遺言は亡くなった方の最後の意思表示ですから、その遺志を尊重し、遺産の分配は指定通りに行われることが原則です。しかしながら、今回のケースのように、相続人が話し合い、全員がその変更に合意すれば、遺言者の指定とは異なる相続分や遺産分割を行うことができます。遺言通りに実現してほしい場合には、遺言者は遺言執行者を遺言書で指定しておくことがのぞまれます。

●遺言の例外

 ただ、遺言執行者が指定されていた場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言執行者もその合意を追認する場合があります。特定の相続人に多くの遺産を与えたい場合、相続人間の力関係等により、意思に反した合意がなされる可能性もあるでしょうから、確実にそのようにしたい場合には、生前贈与等も検討すると良いでしょう。

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会
※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。


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