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2014年 12月号 持ち帰り残業は労働時間になるか?
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持ち帰り残業は労働時間になるか?

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<ある会社の事例>

 A社では昨年、労働基準監督署の指導を受け、本格的な残業の削減に取り組んでいます。今年からは社員の残業時間を減らすため、午後8時を過ぎると強制的に社内の照明を切り、その時間以降に残業が出来ない仕組みを作ったのですが、上司に黙って仕事を家に持ち帰る社員が出てきました。この社員の持ち帰り残業に対して給与を支払う必要はあるのでしょうか。

 部下が上司の承認を得ることなく仕事を自宅に持ち帰った場合は、原則として労働時間にならないため、給与を支払う必要はありません。ただし、上司がその持ち帰り残業を黙認していた場合や、持ち帰り残業をしなければ処理しきれない量の業務を指示していた場合は、黙示の指揮命令があったものとして労働時間と判断されます。

労働時間とは何か

 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間を指し、労働時間に対して会社は対価としての賃金を支払う義務があります。労働基準法では、社員を働かせることができる1日または1週間の労働時間の上限や、一定の期間働かせた場合に付与すべき休日日数、労働時間の長さに応じて付与しなければならない休憩時間などの最低基準が定められています。ここでいう「労働時間」は、社員を実際に労働させた時間であり、「会社が社員に労働させた」かどうかを客観的な事実関係によって判断することになります。

労働時間の判断基準

 上記のことから、休憩を除く始業から終業までの所定労働時間内で本来の業務をしている時間は労働時間になりますが、それに付随する準備時間や休憩中の電話当番などは労働時間に当たるのでしょうか。
 判例では「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外に行うものとされている場合であっても、当該行為は特段の事情がない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができる」と、会社の業務命令で行っているものは労働時間であると判断しています(三菱重工業長崎造船所事件 最高裁一小 平成12.3.9判決)。

□労働時間の判断例

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持ち帰り残業は労働時間になるか

 持ち帰り残業が会社(上司)の指示に基づいて行われるものとすれば、それは当然に労働時間になると言えますが、今回の事例では上司の指示によるものではなく、社員が自らの判断で仕事を家に持ち帰っています。
 この場合は、もし上司の関知しないところで持ち帰り残業が行われていたならば、会社の指揮命令下で働いているとは判断されず、労働時間にはあたりません。しかしながら、持ち帰り残業をしなければこなせないような仕事を与え、上司が仕事の持ち帰りを禁止する等の措置をとらずに黙認したため、社員が自宅に仕事を持ち帰ったときには、それは「労働時間」と判断されます。持ち帰り残業が労働時間になるのを防ぐためには、持ち帰らざるを得ない業務量を与えないことや、社員に対して明確に持ち帰り残業を禁止することを示すなどの対策を検討する必要があります。

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資料作成:社会保険労務士法人アーク&パートナーズ
※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。

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