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2013年 9月号 過労死・過労自殺
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<大庄事件>(京都地裁平成22年5月25日判決、大阪高裁平成23年5月25日判決)

 本判決は、大手飲食店チェーン店の新入社員Aが急性心機能不全により死亡したのは長時間労働が原因であるとして、Aの両親が、Y1社とともにY1社の取締役であるY2ら4人に対して、損害賠償請求した事案です。1審、控訴審ともに、社員の過労死について、Y1社に対して安全配慮義務違反による損害賠償責任を認めるとともに、直接労働時間を管理する立場にないY1社の取締役らに連帯して8,000万円近い損害賠償責任を認めました。
(なお、本判決は、現在、最高裁に上告・上告受理申し立てがなされています。)

1.平成24年度「脳・心疾患と精神疾患の労災補償状況」

 厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、平成14年から労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1回、取りまとめています。くも膜下出血などの「脳血管疾患」や心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、これにより死亡した場合は「過労死」と呼んでいます。
平成24年度の脳・心臓疾患に関する労災補償状況では、請求件数は842件で、前年度比56件の減となり3年ぶりに減少しましたが、支給決定件数は338件(前年度比28件の増)で、2年連続で増加しています。
また、精神障害に関する労災補償状況では、請求件数は、1,257件で、前年度比15件の減となりましたが、引き続き高水準で推移しており、支給決定件数は475件(前年度比150件の増)で過去最高となっています。

2.裁判における労災認定基準と安全配慮義務違反

 脳・心疾患の労災の認定基準は、発症前1か月間におおむね100時間または2ないし6か月間にわたりおおむね80時間を超える場合は、業務と発症との関連性が強いと評価しています。上記の大庄事件では、認定基準を根拠に業務起因性を認め、その上で、会社は認定基準を考慮に入れて社員が長時間労働にならないような措置をすることが要請され、会社は適切な措置を取らないことで災害が発生したとして会社の安全配慮義務違反を認めています。

3.会社の安全配慮義務と取締役の賠償責任

 会社法429条では、株式会社における取締役の地位の重要性に鑑み、「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」とされています。大庄事件では「取締役は会社に対する善管注意義務として、会社が使用者としての安全配慮義務に反して、労働者の生命・健康を損なう事態をまねくことがないよう注意する義務を負い、これを懈怠して労働者に損害を与えた場合は会社法429条第1項の義務を負う」とし、現実に従業員の多数が長時間労働に従事していることを認識していたかあるいは極めて容易に認識し得たにもかかわらず、これを放置させ是正させるための措置を取らせていなかったことは善管注意義務違反であるとしました。また不法行為責任についても同様であるとし、1審では直接労働時間を管理する立場になかったとして否定された取締役の不法行為責任も認めました。

4.長時間労働を抑制する措置の義務と取締役の責任

 事故の業務起因性と会社の安全配慮義務違反について医学的には疾患の原因が解明されていなくても、労災の認定基準に基づいて判断されている傾向にあるようです。労働安全衛生法でも長時間労働に及んだ労働者が希望する場合には医師の面接指導が義務付けられていますが、会社は認定基準を考慮に入れて社員が長時間労働にならないような措置をとることが必要になってきています。会社の利益を上げるには労働力は不可欠ですが、その労働力を提供する社員の長時間労働を抑制する措置を講じた上でいかに有効活用するかは、管理監督者だけでなく、会社に対する善管注意義務を有し、会社を経営する取締役等にも求められています。

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資料作成:根岸人事労務事務所 根岸純子
※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。

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