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2013年 4月号 退職・解雇の意思表示の撤回はできるでしょうか
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ある清掃会社の事例

 A社は清掃業を営んでおり大規模小売店舗等の大きな商業施設などに人を送り込んでいます。また、地域ごとに責任者を置き清掃人の労務管理を行わせており、労働者の募集、採用、退職、雇用条件等の雇用管理の責任と権限を担っています。
 A社の中国地方のB地区のある商業施設で問題を起こしたパート社員Cがおり、このままでは会社としても取引先会社に契約を打ち切られかねず、また他の従業員からもCさんとは一緒にやっていけないという声もあがり、さらに雇用契約上の解雇事由に該当するので責任者であるD氏はCさんを解雇することにしました。解雇は予告解雇で30日前に予告するつもりでした。そこの作業場は慢性的な人手不足で募集もままならない状態なので、不充分な勤務ぶりではあるけれど30日間はCさんに働いてもらい、その間に募集をするつもりでした。

予告解雇のつもりが・・・

 そこで賃金支払日に、D氏はCさんを呼び解雇を言い渡そうとしましたが、Cさんと言い争いになってしまい、「明日から来なくていい」と言ってしまいました。Cさんは「はい、わかりました。」と言って帰って行きました。D氏は興奮が冷めてくると30日前に予告するということを忘れて即日解雇にしてしまったことに気づき直ちに携帯電話でCさんに連絡を取ろうとしましたが出てくれません。さらに「即日解雇の撤回」の内容と謝罪文を速達でだしたのですがなしの礫です。

解雇の撤回は可能か?

 思い余って労基署に相談に行き事情を説明しましたが、労基署では「撤回には相手の同意が必要です。」との答えでした。D氏は解雇の撤回を伝えたのだから、それでも退職すると言うのならば自己都合退職になるのではないでしょうか、と質問したのですが、「それは無理でしょう。」との返事でしたので、結局30日分の解雇予告手当を支払うことになりました。

 上記の例は珍しい例です。普通は解雇の撤回の問題は、労働者側から解雇無効を主張する例がほとんどです。
また、退職届を提出した後でその撤回を要求するケースもあります。

退職届の提出後に撤回を要求したケース

 大隈鉄工所事件(最三小判昭62.9.18)では、労働者が人事管理の最高責任者である人事部長に対し、退職願に記入、署名、捺印したうえで提出しましたが、その翌日になって気が変わり、退職願を撤回することを課長に申し出ましたが拒絶されました。そこで従業員としての地位があることの確認を求めて提訴しました。

 一審では退職の意思表示は無効とされましたが、二審では退職の意思表示は労働者の撤回により効力を失ったとして、労働者の請求を認めました。そこで会社が上告しました。

 最高裁は、「労働者の退職願に対する承認については入社に際して行われる筆記試験や役員面接試験とは異なり、採用後の労働者の能力・人物・実績等について掌握しうる立場にある人事部長に退職承認についての利害得失を判断させ、単独でこれを決定する権限を与えることとすることは経験則上何ら不合理なことではない。~略~。(なお、会社の「職務権限規定」によれば、人事部長固有の権限として、課次長待遇以上の者を除く従業員の退職願に対する承認は、社長・副社長・専務・関係取締役との事前協議を経ることなく人事部長が単独でこれを決定しうることを認めた規定の存在が窺われる)。
 人事部長に退職願に対する退職承認の決定権があるならば、人事部長が労働者の退職願を受理したことをもって雇用契約の解約申込みに対する会社の即時承認の意思表示がされたものというべく、これによって雇用契約の合意解約が成立したものと解するのがむしろ当然である。」として、人事部長が労働者の退職願を受理したことで、即時に会社がこれを承諾したものとして退職は有効になされたと判断し会社の勝訴としました。

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資料作成:社会保険労務士 吉田達事務所 吉田達
※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。

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