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2012年 6月号 不祥事による解雇
不祥事による解雇

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あるIT関係企業の事例

 都内にあるIT関係企業の話です。その会社は創業約8年で、従業員は10人程の小企業です。当初は、社員3人という規模でしたが、中でも創立以来の社員のAさんを社長は絶対的に信頼し、社内の業務はすべて任せていました。しかし、8年を経過する頃にそのAが家庭の事情を理由にして1ヶ月後に退職したい、と言ってきました。当然慰留し一応退職願を預かるということにしました。そして、ちょうど業務が比較的ヒマだった時期でもあったので、3日間の有給休暇を取らせて考える時間を与えました。
 ところがAさんが有給休暇に入った後、他の社員からAさんの仕事ぶりについての他の社員の訴えが次々に出てきました。曰く「Aさんは朝出社するとまずパソコンのメールを確認した後は退社までゲームとmixiやfacebookなどを利用する以外何もしていませんでした。」「顧客から電話があってもただ人につなぐだけで、あの人は交換手と同じです。」「退職した人たちのほとんどはA さんが原因でした。」…。また、社長の留守中全社員の前で自分に意見をしてきた社員を、今回確認されたような事実を社長に報告しないように罵倒、恫喝し退職に追い込んでいたことや、社有車も休日に私用で勝手に乗り回していたことも明らかになりました。因みにこの会社は社長室と従業員のフロアは別になっていました。

 最初は信じられなかった社長も、やがて事実を認めざるを得なくなり、休暇明けのAさんに対して事情聴取をしたところ、Aさんはその事実を認めはしましたが、社長には終始不貞腐れているような態度に思われました。そこで3日間謹慎ということで自宅待機を命じたのですが、社長は、その間に退職した人たちに対しても追跡調査をしました。すると、異口同音に「Aさんはゲームばかりしていて、私達には無茶な要求を繰り返した。」「Aさんは、自分がやるべき仕事を部下に押し付け、売上を上げろと文句を言う。この仕事は貴方の仕事ではないでしょうか、と言っても、オレが楽をするために入社させてやったんだから文句言うな。」などと訴えてきました…。

Aさんを懲戒解雇処分にできるか?

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 Aさんは謹慎期間が終わっても出勤しませんでした。社長はAさんのような問題社員は企業秩序維持のためにも自己都合退職を認めずに改めて懲戒解雇処分にし、さらに即時解雇ということにしたいため、労働基準監督署署長の解雇予告除外認定を受けたいと思い労働基準監督署に相談に行きました。
 しかし、労基署側の説明では、解雇予告除外認定は余程の悪質な行為、原則として極めて軽微なものを除いて、事業場内における盗収、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合などに限られ、このケースでは難しいとのことでした。しかし、社長はそれでも解雇予告除外認定が認められなくても懲戒解雇にはこだわっておりました。というのもあらためて就業規則を読むと退職金規定には、懲戒解雇の場合は退職金を支払わない、となっており自己都合退職を認めると退職金を支払う必要があるからです。そこで、「懲戒解雇にするのはどうですか」と質問したのですが、「可能ですが解雇不当で訴えられるリスクもありますよ」ということでした。

 社長は会社に帰り、とりあえずAさんが使用していたパソコンの解析を依頼しました。数日後見積が届きましたがその額はAさんの退職金の10倍以上でした。社長はさらに、仮に裁判になった場合は弁護士費用も発生するだろうし、とも考えました。そこで、他の幹部社員を集めて協議しましたがその会議で、Aの長年にわたる会社への背信行為は断じて許されるものではないが、Aには扶養されている3名の妻子がいることに加え、本人が33歳とまだ若く、将来(特に今後の就職活動)に非常に不利な影響をもたらすであろう事を考慮すると、懲戒解雇処分は些か可哀想ではないかとの意見もだされました。そして、Aの処分に係る各意見を慎重に検討した結果、退職願も提出されていることから、今回は特別の情状をもって自己都合退職扱とし退職金も支払いました。そして、社長は社長室を応接室にして、自分は社員と同じフロアに移りました。

 以上でこの件は落着しましたが、いろいろな問題を含んでいます。それに関しては別添資料をどうぞ。

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資料作成:社会保険労務士 吉田達事務所 吉田達
※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。

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