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2012年 4月号 最近の社員事情~その傾向と対策とは~
最近の社員事情~その傾向と対策とは~

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 あるホームページ制作会社が社員を募集し、30人近い応募者の中から1人採用しました。しかし、その社員は最初の3日間は会社に無遅刻で出勤していましたが、4日目に始業時刻が過ぎても出勤しません。社長が自ら電話すると、その社員は、「財布を落としてしまったので、出勤できません。今日で辞めます。」という不可解な返事。どう説得しても「辞めます。もう出社しません。」の一点張りなので、やむなく認めました。但し、まだ雇用保険も社会保険も手続きをしていなかったので、そのまま退職ということになりました。

 社長としては、3日間、説明と教育だけで働いていないのだからと賃金など支払わないつもりでした。ところが、賃金支払日を過ぎて3日ほど経った後、その元社員からメールが来ました。
 内容は、「3日間分の賃金を支払え。もし、支払わないのならば労働基準監督署に訴える。」というものでした。社長は激怒し、募集するために人材採用機関に支払った費用、また人件費即ち、面接にかかった時間、多数の応募者の履歴書を読んだ時間、つきっきりで教えた時間、それから交通費、その社員を受け入れるためのシステムの改変にかかった費用、これからまた募集にかかる費用、それらのコストはどうしてくれる?大損害だ。何が「賃金支払え」だ。むしろその元社員に損害賠償を請求したいとまで考えました。

 やがてこの件につき労働基準監督署から呼出状が届きました。社長は自ら労働基準監督署に赴き、担当者に説明しました。労働基準監督署の担当者は、「やはり、3日間は賃金が発生しています。支払わなければなりません。」ということでした。社長は勿論、怒りましたが、そこは社長をしている人だけあって、一旦冷静に考えました。それからもすったもんだがありましたが、社長は結局3日分の賃金を支払いました。

上述のケースは、社長があきらめ一件落着となりましたが、社長が実際に社員に対して損害賠償請求ができるのでしょうか。その事例を以下に述べます。

事案概要 ケインズインターナショナル事件(東京地判平4.9.30)

室内装飾等を目的とする会社に入社した36歳の男性労働者が、入社4日目にして仕事に音を上げ、1ヶ月の研修期間が与えられている途中で転職してしまったため、突然の退職によって損害を被ったとして、会社が労働者に200万円の損害賠償を支払うことを約束させたところ、労働者が、雇用契約は試用期間付のものであって解約は自由であり、また、損害を賠償する約束は強迫によるものであって取り消しうると主張しました。

裁判結果: 会社側の主張の一部認容

判決理由の主旨
  • 1.雇用契約は試用期間付ではない。
  • 2.被告は「損害賠償の約束は強迫によるものである」と主張するが、被告は36歳の男性であるのに対し原告代表者は同年齢の女性であって、しかも損害賠償についての交渉は、原告代表者からの求めに応じて、被告が原告の事務所に赴き、夜の7時30分頃、原告代表者の他に女子職員1名が同席している状況で行われ被告が抵抗したり退席しようとすればさほどの困難なしに実行可能な状況だったことからして、強迫によるものとは認められない。
  • 3.会社の実損害は、それほど多額ではない。
  • 4.原告は採用につき、労働者(被告)の人物、能力等につき、ほとんど調査することなく、紹介者の言をそのまま信じたに過ぎず、会社には採用、労務管理に関し欠ける点があった。

以上の理由から信義誠実の原則を適用して賠償額を減額した上で、労働者(被告)に70万円の支払いを命じました。

※このケースは会社の主張が認められましたが、類似のケースであっても、必ず、会社の主張が通るわけではありません。厳しく両者の主張を吟味して判決が下されることは言うまでもありません。

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資料作成:社会保険労務士 吉田達事務所 吉田達
※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。

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